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雨の香が好きだ。 黒く濡れた地面から、雨露を含んだ木立から、水蒸気になって立ち上る 湿度を帯びた香―
鼻腔から入ったその香は、五感を一瞬にして目覚めさせる。 暖まった地面を濡らす、今時期の雨からは 「夏のにおい」と自分で名づけた、はっきりとした香が広がる。 その香を吸い込むと同時に、頭に去来する様々な光景はすべて夏をイメージさせるもの。
淡い紫はつぼみの朝顔、かすかに響く風鈴、真っ白な雲と同じ色の砂浜、波しぶき。 焼け付くようなアスファルトを歩いた後に入ったカフェ。 ほてった身体から熱が引いていく心地良さまでリアルに感じられる。 苦味のきいたエスプレッソがかかった、私の夏の定番アフォガードはガラスのカップの中で、ゆっくりと溶けていく。 スプーンでひとすくい、のどをすべらせると 全身の汗が徐々にひいてゆき、肩の力がほっと抜ける。
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